内縁とは、婚姻の意思をもって夫婦共同生活を営み、社会的にも夫婦として認められているにもかかわらず、婚姻の届出をしていないために法律上は夫婦として認められない事実上の夫婦関係を言います。(「新・法律相談シリーズ 夫婦の法律相談」(有斐閣/梶村太一・棚村政行編)より引用)
内縁の成立要件としては、まず婚姻の意思が必要です。
これは社会通念上の夫婦関係を営む意思で、婚姻の届出の意思までは含まないとされています。
そのほか夫婦としての共同生活の実態とその継続性、性的関係の継続性、周知の程度、婚姻儀礼の有無等を総合的に考慮して内縁の成否が決まります。
内縁関係にある一方が死亡した場合には内縁も解消となります。
遺されたもう一方の方に対する相続権は一般的には認められません。
また、この場合の財産分与について最高裁は「内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、法律上の夫婦の離婚に伴う財産関係に関する民法768条の規定を類推適用することはできない」と判示しており(最高裁決定平成12年3月10日)、財産分与は通常は認められません。
したがいまして、内縁関係にある方でお相手の方に財産を残してあげたいとお考えの方は遺言を残す必要があります。
なお、相続人が不存在の場合には特別縁故者による相続財産の分与請求(民法958条の3)をすることができます。
内縁の解消は、当事者双方の合意によって当然なしえます。
また、正当事由があるときは、当事者の一方的意思表示によって内縁解消ができます。
正当事由は裁判上の離婚原因に該当する行為や事実と同一に考えられており、不貞行為、悪意の遺棄、虐待・侮辱、夫婦生活を送るに堪えられない健康状態などが挙げられますが、個々の具体的な事件における諸状況によって判断されることになります。
さらに、正当事由が無い場合であっても、内縁は離婚と違って形式的要件が不要なので、一方的な意思表示もしくは行為によって解消できます。
もっとも、正当事由が無いことから、内縁の不当破棄として不法行為による慰謝料などの損害賠償責任を負う可能性は出てきます。
(「離婚・離縁事件実務マニュアル改訂版」(ぎょうせい・東京弁護士会法友全期会家族法研究会編)より引用)